「おもちゃの魔法が呼び覚ますキーコネクトっ」
第3章 時と実力の駆け引き
第3章第2話 情熱は睡眠に勝る
ウィルスの寝不足な毎日が始まった。
いや、今までも十分寝不足で、工房で朝を迎えていたのが、さらに輪をかけて忙しくなった。
昼間は注文を受けている品物の製作、夜はコンクール用のおもちゃの製作。
ウィルスの眼の下が黒ずんでくる。それとは逆に、目の光は日ごとに増した。
「ウィルス、つみきの注文3つ!」
リットに応えてから、作業中のぬいぐるみ製作を急ぐ。
だが、どんなに急いでも、ウィルスの辞書に妥協の二文字はなかった。
素早く丁寧にを心がけたウィルスの品物は、これまで以上に売れ行きを伸ばした。
一人では限界以上の予約は一年待ち。
子供の成長は早いので、ウィルスも最大限のスピードで作成しているが、とても追いつかない。
それと比例して、ウィルスの落ちくぼんだ目がらんらんと光を帯びる。それはある意味、幸せの絶頂だった。
おもちゃにだけどっぷりと浸れる日々。一目一目縫うごとに、魂を削る思いで縫い込んでいく。
そして、日が沈むと、ランプの下でコンクール用のおもちゃ作りに精を出した。
工房に響くのこぎりの音に、さすがのテディも心配して口元に手を当てる。
「ねぇウィルス、少しは休みなさいよ」
「あぁ分かっているよ。だけどもうちょっとだけ……」
周りではおもちゃ達がウィルスを手伝っているとはいうものの、ウィルスは生身の人間だ。
テディはさらに声をかけた。
「ねぇ、本当に、ちょっと寝たら? ここ最近まともに寝てないじゃない」
「うん、でもこうやってる方が楽しくて」
のこぎりで切り落とした木材を山積みにした木片置き場に置く。
そしてまた、図面を見ながら型取り、のこぎりを上下に動かしていく。
テディは嘆息して、作業机から飛び降りた。
そして、周りのおもちゃ達と同じように手伝いを始める。
「リットも言ってたけど、ほんと、おもちゃ馬鹿というかなんというか。おもちゃのわたくしがいうのも何だけど」
木片置き場の木材を手に取ってヤスリをかけながら、テディはぬいぐるみながら頭痛がしてくる思いだった。
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- 第3章第3話 体力よりも熱意
- 第3章第2話 情熱は睡眠に勝る
- 第3章第1話 おもちゃ職人の血が騒ぐ
もくじ オリジナル作品について
総もくじ アリストスディバー
- ┣ 世界創生
- ┣ 序章
- ┣ 第1章 寝起きの女神?
- ┣ 第2章 秘宝と秘法
- ┣ 第3章 孤独な王
- ┣ 第4章 記憶のシグナル
- ┣ 第5章 目覚めは破滅と共に
- ┣ 第6章 決戦を誓いに変えて
- ┗ 終章 女神の願い
総もくじ 紺碧の王子と恋の秘法
- ┣ 序章 緩徐な幕を破る音
- ┣ 第1章 嫌悪と本望
- ┣ 第2章 ピュアな指先は宵を払う
- ┣ 第3章 心を測る距離
- ┣ 第4章 強欲の監獄
- ┣ 第5章 ほころぶ花の蜜
- ┣ 第6章 自由と隣の危険
- ┣ 第7章 罪と罰と追放
- ┣ 第8章 失墜した果てに…
- ┣ 第9章 そして、覚醒
- ┣ 第10章 2人の道が寄り添う
- ┗ 終章 恋という音、愛という調べ
総もくじ おもちゃの魔法が呼び覚ますキーコネクトっ
- ┣ 序章 生きがいとして
- ┣ 第1章 歯車が動き出す
- ┣ 第2章 もどかしい喪失感と過去
- ┣ 第3章 時と実力の駆け引き
- ┣ 第4章 業火と燃える魂
- ┗ 第5章 月の涙
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